「ボルトのねじ山にグリスを塗る」ことは自転車の世界では常識らしく、整備方法を紹介しているブログなんかを読むと皆さんボルトにグリスを塗るよう書いています。
グリスを塗っておけば異種金属が接触すること(アルミのフレームにスチールボルト とか)による腐食・固着が起こりにくいとのことで、なるほどこれはグリス塗っておくのが良さそうだな、グリスなんて安いもんだしなと思うわけですが、いろいろ調べていくうちに少数ながら「ボルトにグリスは塗らなくてよい」という人がいることもわかりました。
いわく、
- シマノのマニュアルにはボルトにグリスを塗布しろなどとは書いてない
- シマノのマニュアルに記載されているボルトの締め付けトルクは基本的に「グリスを塗布していない」状態での数値である
- 不要なグリスをつけてボルトを締めてしまうことは過剰な締め込み、破損の元である
たしかに、シマノの『基本作業書』*1なるPDFをよく読んでみるとボトムブラケット等一部の部品を除いてグリスを塗るようには書かれていません。"あの"シマノが塗る必要なし(あるいは「塗るな」?)としているボルトに果たしてグリスを塗るべきなのかどうか、ちょっと気になるところ。
それじゃあ完成車メーカーはマニュアルでどう言っているのかと思いググってみたところ、ピナレロさんがとてもわかりやすく書いてくれていました。
適正な締め付けトルクはねじにグリースを塗布しているか、 ゆるみ止め剤を使用しているか、 潤滑油を除去しているか、によっても異なります。 ほとんどの指定トルクはそのコンポーネントのメーカーによって指定されており、 コンポーネントの取扱説明書に指示されています。
固着は異素材間 (チタニウム-アルミニウム、 スチール-アルミニウム) でしばしば発生する傾向があります。 これらのリスクを避けるため、 今までは主にグリースを塗布する方法がとられてきました。 しかしグリースを塗布したねじはゆるみやすく、 またグリースは飛散、 漏洩するので永続的な磨耗、 腐食からの保護性能は期待できません。 そのため、 現在では異音を軽減する目的にのみ使用します。
ゆるみ止め剤には固定強度の異なる様々な仕様がありますが、 自転車に用いるねじには低強度で取り外し可能な 『ロックタイト 222』 もしくは 『Arexons System52A22』 が適しています。 ゆるみ止め剤を使用することで、 1) 適正トルクを超えて締め付けなくても、 固定力が得られる。 2) かみ合うねじ間に充填されることで、 ねじ山の磨耗、 腐食を防ぐ。 3)振動による異音の発生を防ぐ。 4) その機能が長期に渡って維持される。 という利点があります。
マニュアルでグリスの塗布が指示されている部分はそれに従うとして、その他のボルトは塗ってもロックタイト222にしておくのが無難ということでしょうかね。もっとも、ロックタイトにも「取り外したボルトのねじ山にカスが残る」という難点があるわけですが。パーツクリーナーじゃきれいに取れないんですよね、あれ。